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【手話マップ・レポート vol.18】福岡市美術館のバリアフリーギャラリーツアー

福岡市美術館/ 福岡市

レポート詳細 投稿日:2021年01月04日

新年、あけましておめでとうございます。
さて早速ですが、手話マップ・レポートをお届けします。
2020年8月29日、30日、9月26日の3日間、福岡市美術館は「バリアフリーギャラリーツアー」を開催しています。その内容が美術館のブログにて報告されています。
https://www.fukuoka-art-museum.jp/blog/12536/

全国各地の美術館は幅広い取り組みをされていますが、福岡市美術館のこのツアーのユニークな点は、視覚障害、聴覚障害、車いす利用者といった異なる障害にアプローチしたプログラムを実施している点にあります。それぞれのプログラムについて述べます。

視覚障害については、おそらく各地の美術館でツアーをされることが多いように思われるのですが、こちらでも手袋をはめ、朝倉文夫のブロンズ彫刻《墓守》の鑑賞をしています。朝倉の彫刻、いったいどんな肌触りなのでしょう、ぜひ経験してみたい内容となっています。
また福岡市美術館には「東光院仏教美術室」という、仏像を展示している部屋があり、その仏像のレプリカに触って鑑賞することをプログラムに組み込んでいます。こうした触る鑑賞について当事者の感想が紹介されており、今後の方法の開発がより期待される内容になっています。

聴覚障害については、手話通訳を同行する形で「目で聴くツアー」を開催されています。参加者の中に手話をされない方がいらっしゃったことから、要約筆記も準備されたとのことです。ところで、最近はミュージアムにおいても、こうした要約筆記の取り組みも散見されているようになりました。海外では「リアルタイムキャプション」として字幕表示の機器を使用して情報保障を行っているところもあります。こうしたアクセシビリティの広げ方について、今後の取り組みが期待されるところです。

車いす利用者のためのツアーは、車いすユーザーだけでなく、ふだん車いすを使用されない方も一緒にツアーをするというプログラムを組まれています。つまり、利用者でない方に車いすに乗るという機会があるということですね。こうしたプログラムを介して車いすを経験することで、日常生活での車椅子ユーザーとの接し方がより深まるように思われます。
ところで、この車いすに関する「まなざし」の問題として、市野川容孝「「障害者」差別に関する断想─一介助者としての経験から」(坪井秀人/編著『偏見というまなざし 近代日本の感性』収録)という、興味深い論文があります。
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787231833/

これは市野川さんが車いすの方と一緒に行動していた時、街ですれ違う人たちの視線が普段と違うことに気づくというエピソードが語られています。現在品切れの本なので、図書館で探してみてください。
そうした車いすに乗るという機会を公共の場で経験することは、作品鑑賞だけでなく身体の新しい経験として興味深いものがあります。
手話マップでは、聴覚障害とミュージアムに着目した活動をしていますが、他の障害についても引き続き関心をよせていきたいと考えております。
福岡市美術館の今後の活動にぜひご注目ください。

※画像はwikipediaより引用しました。

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