レポート

【手話マップ・レポート vol.22】水戸芸術館で上映中の藤井光の映像作品の日本語テキスト

水戸芸術館/ 茨城県

レポート詳細 投稿日:2021年04月14日

今回も映像作品のお話になります。
水戸芸術館の現代美術ギャラリーで「3.11とアーティスト:10年目の想像」展が5月9日まで開催中です。「過去」になりつつある10年前の東日本大震災を「想像力の喚起」をもって現在の私たち、そして後世へと語り継ごうとする作品群を紹介する展覧会です。出展作品の大半が映像作品で、計9本の映像作品がモニターやスクリーンに映し出されていて、全てを見ると計3時間になるそうです。
その中で、藤井光の映像作品《あかい線に分けられたクラス》には日本語字幕は付いていませんが、日本語テキストが別に用意されています。希望される方は近くの監視員に申し出れば借用できます。終わりましたら、必ず監視員にお返し下さい。

藤井光は、過去の映像や資料を取り上げて、社会の事象、歴史や記憶、関係性を再解釈し、フィールドワークやワークショップなどを通して未来に向けて新たな展望を提示していく作品で注目されている映像作家です。今回の《あかい線に分けられたクラス》も東日本大震災を契機とした「差別」を小学生たちの”授業”を通して体感し、「差別」とは何かを考えさせるプロセスを記録した映像作品です。
ただ、コロナ禍ゆえに映像の中で先生も小学生たちも全員がマスクを着けていて、聞こえない視聴者には表情が読み取りにくく、どういう展開になっていくかも把握できないまま退屈な映像作品に終わってしまうかもしれません。しかし、日本語テキストによって出演者たちのセリフがわかると、小学生たちが実は本物の小学生たちが感覚では捉えにくい「差別」を意識化、いじめを体感して「差別」が無いことを望んでいく流れがとても自然であることに新鮮な驚きを覚えました。その作品は、アメリカで実際に行われた、「差別」に向き合う授業を水戸芸術館の「3.11後版」にリメークしたものだそうですが、当の作品にはエンドロールに至るまでに大人たちの演出やウソも仕掛けられていてハプニングもあったことも、日本語テキストのおかげで知ることができました。視聴者としても「これはドキュメンタリーなのか?ではないのか?」と戸惑っていました。
藤井光の映像作品が単なるドキュメンタリーではないと気づき、自分なりに解釈したり仕掛けを探していくことも、現代美術としての映像作品の面白さであるといえます。是非、日本語テキストとあわせてご覧下さい。

なお、当展では他に小森はるかの映像作品の一部に日本語字幕が付いているものもあります。

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