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【手話マップ・レポート vol.23】東京都写真美術館「おうちでワークショップ」に参加してみて。。。

東京都写真美術館/ 東京都

レポート詳細 投稿日:2021年05月07日

新型コロナウイルス感染症第4波のあおりで、東京都や関西ではミュージアムが軒並み臨時休館が相次いでいます。そんな折に、去年末から今年始めに東京都写真美術館(以下、TOP)が実施した2つの「おうちでワークショップ」を思い出さずにはいられません。
コロナ禍が始まって以来、多くのミュージアムが自宅や屋内でできるワークショップをオンラインなり郵送なりして提供してきています。それらのほとんどが自宅で完結し、自分だけで楽しむパターンです。
その点、TOPの「おうちでワークショップ」はおうちでのワークショップの成果をTOPにリターンし、TOP側で他の参加者たちの成果をもあわせて構成の上、参加者たちに返してくれるものです。
筆者も参加したTOPの2つの「おうちでワークショップ」についてあらましと感想をお話しします。あわせてTOPが制作した動画もお楽しみ下さい。

<おうちでワークショップ 青写真—太陽の光で影を写しとる> (2020年12月17日、12月18日、12月19日)
1つめは「青写真」というタイトル通り、昔ながらの簡単なやり方で印画紙の上に色んな物を置いてはその影を写しとり、自分のオリジナルの図を描くものです。
まずはTOPのホームページにて指定された日時にTOPで配布されるキット「青写真体験セット」を受け取りに行きます。事前申し込み不要でしかも無料でした。面白いことにキットに含まれる青写真印画紙はTOP自家製だそうです。キットには印画紙が2枚、制作の丁寧な手引きも入っていましたので、ある程度コツがつかめました。特に写し終えた印画紙の「定着」「洗浄」には自宅にある洗濯の漂白剤や料理用トレイを使ってキッチンの流しでやりましたが、印画紙の青色が明るくシャープになってくる様子に本番さながらの臨場感がたまりませんでした。出来上がった自分の作品をスマホに撮り、TOPに送りますと、2ヶ月後にTOPよりYoutube動画のリンクが送られてきました。それは自分のみならず他の参加者やTOPスタッフの手になる作品の数々がスライド式に次々とコマ送りされています。
ゆっくりとスライドされていく青写真の静謐で幻想的な青色、そして各々の作者たちの様々な感性、アイデア、偶然性が一瞬で凍ったような作品の間には文脈も関係性もないはずですが、ずっと見ているとそのまま夢の中に誘われるような感覚に陥ります。自分の作品がTOPのスタッフたちの手によって新たな価値をもって生まれ変わっていたことに驚きと感動を覚えるのもまた楽しいです。
なお、そのキットの中で200年前に生きた植物学者、アンナ・アトキンスに触れて、青写真を使って植物標本を制作したことから「最初の女性写真家」とされていることも大変興味深い話で、写真史の一端を知ることもまた楽しいです。
https://www.youtube.com/watch?v=4HvpU9Si6_I

 

<おうちでワークショップ 手作りアニメーション体験—おどろき盤 【対面配布】> (2021年1月10日、11日)
実はTOPごと東京都写真美術館は写真のみならず映像作品をも収集している美術館で、館内でも「フェナキスティスコープ」と呼ばれる原始的な手法でアニメーション映像を見ることができます。
2つめは「フェナキスティスコープ」を活用するもので、前述の青写真と同様にTOPに行って受け取った、円盤状の台紙「おどろき盤(フェナキスティスコープ)」上のコマに絵や図形を少しずつ変化させながら描いていきます。それを鏡に向かって回転させ、盤上のスリット(隙間)を通して鏡に映る円盤を見ると、描いた絵が動画として見られるようになっています。動いていくイメージを 12コマに描きこむのは青写真の時よりも難度が高かったんですが、そのままスキャンしてTOPに送って返ってきたYouTube動画では思いのほかきれいに、あたかも生命を吹き込まれたかのように動いていて、我ながら驚いていました。他の作品の芸術性、ユニーク性の高さにも感心しつつ、まとめて1つの芸術作品として鑑賞するのもまた楽しいものです。
https://www.youtube.com/watch?v=8IJ0zpzBKkQ

それら2つの「おうちでワークショップ」の大きな特徴は、リアルタイムではなく時間をかけつつ、美術館と参加者の間でアルファベット”Z”のように1往復半行き来しながら創作が2回加えられている点です。それは、自分もStayHomeしながら創作意欲を大いに掻き立てられ、そして創作した甲斐が感じられること、意外と自分の作品を第三者の眼で鑑賞できることなどのメリットがあります。がそれ以上に、「Zターン型」関係性によって、物理的にTOPに行けなくてもTOPが一層身近に感じられることが「おうちでワークショップ」の大きな醍醐味であると考えています。
それは聞こえる、聞こえないには関係ないことで、聴覚障害当事者にとっては楽しみながらやり甲斐を感じることでむしろ参加しやすいのではないでしょうか。
TOPにおいては上記の「おうちでワークショップ」の今後の実施日程は未定だそうですが、「おうちでワークショップ」と同様な自宅で楽しめる「Zターン型」ワークショップが各地のミュージアムで開催されることを願っております。

【参考リンク】
TOP「おうちでワークショップ」のご案内ページ
http://topmuseum.jp/contents/workshop/details-3985.html
https://topmuseum.jp/contents/workshop/details-3992.html

※画像はWipipediaより引用しました。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tokyo_Metropolitan_Museum_of_Photography_entrance_2011_January.jpg

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