レポート

手話マップ・レポート vol.4

レポート詳細 投稿日:2020年05月24日

5月も終わりつつあり、腕まくりをするような日々となっています。皆様におかれましてはお元気でお過ごしのことと思います。

ところで、ミュージアムと手話・文字保障などのアクセシビリティについて考えるとき、まず何から考えるのでしょうか。現場でのアクセシビリティを考えることも大事なのですが、背景として法律の視点で考えることも大事になってきます。
たとえば、ろう者や難聴者のように耳が聞こえない方に対する差別を無くすために「障害者差別解消法」(2016年)という法的整備がありました。これによって「合理的配慮」という考え方がいわれるようになりました。
「合理的配慮」とは何かといいますと、「社会的障壁を取り除く」ことです。

耳が聞こえない方が生活を送るときに支障となる要因があります。駅での緊急のアナウンスがわからない、生活に必要な情報を得ることができないといったことです。これを取り除くための考え方が「合理的配慮」となります。(このことは川島聡ほか『合理的配慮 — 対話を開く、対話が拓く』(2016)という本を参考に述べました。いい本ですよ!)

さて、美術館・博物館では展覧会ツアーや講演会などさまざまなプログラムが行われています。これについてろう者・難聴者が参加したいと申し出てきたときにいろんな理由で断られることがあります。しかし現在は公立美術館はどんな合理的配慮ができるのか考える必要が出ています。
これについて、名古屋市美術館のブログではその必要性を認識しつつも、まだ模索されていることを書いています。http://www.art-museum.city.nagoya.jp/blog/?p=2271

一部引用してみます。

「差別的な状況を、気づいたところやできるところから改善していくことは言うまでもありませんが、この法律の施行に当たっては、障害のある人から対応を求められたときに、重すぎる負担の場合は重すぎる理由を説明し、別の対応を提案することも含めて、当事者が話し会い、理解を得るよう努めることが大切だと説かれています。現実には、障害のある方が美術館を利用することは、以前に比べれば増えたものの、いまだ多くはありません。その意味では、障害のある方も我々美術館の人間も、そして障害のない利用者のみなさんも含めて、お互い分からないことの方がまだ多いように思います。」

「お互い分からないことの方がまだ多い」という文章には、手話マップとして、ハッとさせられるものがあります。
手話マップにおいては、ろう者、難聴者などの皆さんのアクセシビリティを拡充する情報を提供するだけでなく、美術館において合理的配慮が必要になった時に当事者として一緒に考えることも重要なミッションと捉え、活動してまいりたいと考えています。
ぜひ応援のほど、よろしくお願いいたします!

 

ピックアップ