南雲麻衣さんがトークタイトルを手話で表している映像です。
東京都現代美術館で開催している「翻訳できない わたしの言葉」展参加アーティストの南雲麻衣さんと、写真家の齋藤陽道さんによるトークを行います。使用言語は日本手話、音声日本語への通訳付きです。
身体表現を主なメディアにしている南雲麻衣さんと、写真を主なメディアにしている齋藤陽道さんは、手話を使うろう者のアーティスト同士として、長く友人関係にあります。二人で話していて気がついたのが、「音を意識していた時と無音(あるいは視覚)の時の表現が変化する」ということでした。展覧会に展示している《母語の外で旅をする》やダンス、パフォーマンスなど、これまで南雲さんがどのように感じどのような表現してきたかの紹介とあわせ、アーティスト二人の身体感覚に迫るお話をしていただきます。
アーティストからのメッセージ
人間はことばをめぐる長い旅をしています。
家庭の中、学校の中、社会の中、共通のコミュニティの中など集合体の中で習得することばは、わたしの言葉になったり、ならなかったりと繰り返してわたしの言葉がつくられていきますが、幼少期から青年期まではどちらかというとわたしの言葉にならなかったものたちが多く、ことばではないもの(身体から発するメッセージのようなもの)と向き合う時間が長かったように思います。
今回、トークでお話しいただく写真家の齋藤陽道さんも口話教育が長く、第一言語である日本手話に移っていったのは、もっと後の高校くらいからだそうです。当時の表現方法のひとつである写真は、言語が移り変わる前の頃と、第一言語である日本手話の身体をもとに捉える世界とでは写真が変わってきたと齋藤さんはいいます。
かくいう私も音がある世界と無音(あるいは視覚)の世界とでは見える景色や立ち上がるものが違います。「ことば」とことばになり得ない「感覚」の世界に2人の表現者が手話で語り合い、知見を広げていきます。
南雲麻衣
1983年、東京都生まれ。写真家。都立石神井ろう学校卒業。2020年から熊本県在住。陽ノ道として障害者プロレス団体「ドッグレッグス」所属。2010年、写真新世紀優秀賞受賞。2013年、ワタリウム美術館にて個展。2014年、日本写真協会新人賞受賞。写真集に『感動』、続編の『感動、』(赤々舎)で木村伊兵衛写真賞最終候補。『よっちぼっち 家族四人の四つの人生』(暮しの手帖社・第65回熊日文学賞受賞)、『ゆびのすうじ へーんしん』(アリス館)、『育児まんが日記 せかいはことば』(ナナロク社)、『異なり記念日』(医学書院・シリーズ ケアをひらく、第73回毎日出版文化賞企画部門受賞)、『声めぐり』(晶文社)、など刊行。2022年には、Eテレ『おかあさんといっしょ』のエンディング曲『きんらきら ぽん』の作詞を担当。写真家、文筆家としてだけでなく、活動の幅を広げている。