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【手話マップ・レポート vol.13】美術館の音声ガイドについて

レポート詳細 投稿日:2020年08月12日

みなさま、こんにちは。手話マップです。ようやく梅雨シーズンが終わり、夏らしい日々になってきていますが、相変わらず新型コロナウイルス感染の再拡大に戦々恐々の心境です。
今回は美術館における音声ガイドについてお話します。

<音声ガイドに実は。。。>
皆様には美術館の大掛かりな企画展の入口付近で音声ガイドの受付カウンターを目にすることはあるかと思います。ヘッドホンで聴くタイプやテレビのリモコンのような機材を耳に当てて聴くタイプの音声ガイドがメインで、耳が聞こえない方には「自分には関係ない」とそのままスルーしてしまうことと思います。
ですが、実は耳が聞こえない方でも音声ガイドを利用する手があることをご存知でしょうか?
音声ガイドサービス会社によっては、耳が聞こえない人向けに音声ガイドの内容を文字起こししたスクリプト(紙)を用意しているところがあるのです。

<音声ガイドスクリプト貸出サービスの利用の手順>
東京都内の主要美術館や国立美術館6館、国立博物館4館の音声ガイドは殆どがアートアンドパート社(以下、アート社と略す)とアコースティガイド社(以下、アコース社と略す)の大手2社の提供になります。両社とも耳が聞こえない人向けにスクリプト貸出サービスを必ず用意して下さっています。
ただ、両社とでスクリプト貸出サービスの利用の手順が少し違いますので、その違いを交えながら説明致します。

①受付
アート社では、受付のパネルの下部に「聴覚がご不自由なお客様へ」というタイトルで音声ガイドスクリプト貸出サービスがあることを知らせています。一方、アコース社はそれを知らせるものがありませんので「スクリプト希望」の旨の申し出を伝えます。
但し、展覧会や美術館によっては音声ガイドのスクリプトが用意されていないケースもありますので、心しておいてください。
(画像はサントリー美術館の音声ガイドを受け持つアート社のパネルです。)

②料金の支払い
前払いで、通常の音声ガイドと同一料金を支払います。(550~650円)
その際、アコース社に限っては借用者の氏名、住所(不要の時もあり)、FAX番号の記入を求められます。その個人情報はスクリプトを借用中はスタッフ側で預かります。

③スクリプト返却について確認
スクリプトを受け取りますが、スクリプトは原則として持ち帰りできません。
スクリプトの利用が終わった後の返却について受付スタッフに必ず確認してください。
アート社は会場の出口にあるヘッドホンや機材の回収箱へ入れておく、アコース社は音声ガイドの受付カウンターに戻って返却するというパターンです。

④利用
音声ガイドは展示作品全てではなく、作品20点程度をピックアップして解説していますので、展示作品のわきの音声ガイド番号を参照してスクリプトを開いてお読みください。ただし、展覧会会場によっては番号が前後することがあります。

⑤返却
アート社は会場出口にある機材の回収箱に入れておきます。
アコース社は受付に戻って、スクリプトの返却と引き換えに個人情報を記入したカードを受けとります。

<音声ガイドとスクリプトのこと>
音声ガイドの内容は、実はその美術館の学芸員や展覧会監修者が決めるのではなく、音声ガイドサービス会社の専門知識が豊富な社員が対象作品をピックアップして内容も考えて作成するそうです。最終的には学芸員や監修者がガイド内容をチェックするのですが。(※)
従って、その展覧会の目玉作品や重要作品が音声ガイドに取り上げられないことしばしばです。また会場の解説キャプションと重複することはほとんどなく、音声ガイドにエピソードや別情報が含まれることはよくあります。その分、スルーしてしまいそうな作品について鑑賞ポイントや隠された意味に気づかされるも多々あります。
音声ガイドには、BGMが流れている他、その展覧会の性格に近いキャラクターのタレントや俳優がナレーターを務めていることも多いので、聞こえる人には展覧会の雰囲気をも楽しみながらナレーションを聞いているかもしれません。
スクリプトですと、紙に「~BGM~」と書いてあるのみです(笑)。聞こえない人が展覧会の雰囲気を楽しむための工夫は今後あってよいかと思っています。
ただ、スクリプトには音で聴く音声ガイドにはないメリットがあります。日本や中国の絵画、工芸にはたくさんの技法や文様、様式が用いられ、それらの専門用語や名称もはんぱなく多いです。当然、それらの名称に漢字があてられていますが、例えば「紙本着色(しほんちゃくしょく)」「古銅龍文象耳花生(こどうりゅうもんぞうみみはないけ)」などと一般にはなじみのない言葉を耳から聞くだけではすぐには頭にうかんでこないだろうと思われます。その点、紙に記載された漢字を見るだけですぐにイメージできるばかりか覚えやすいメリットもあると考えています。最近は漢字にルビがつくスクリプトも多いようです。
作品の前でスクリプトを読みながら時々作品に視線を向けるのは疲れるかもしれませんが、スクリプトから得られた新鮮な情報がすぐに目の前の作品に結びつくこと自体が意外と楽しいのです。驚きや納得感、感動などがもたらされ、聞こえない人の鑑賞をより豊かにしてくれること間違いありません。

(※青い日記帳「インタビュー:音声ガイド」http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2350 より引用。「A&Dオーディオガイド」とはアコースティガイド社の旧名です。)

最近は音声ガイドやスクリプトに代わって、「トーハクなび」「ポケット学芸員」などスマホアプリを導入するところが増えてきています。それについては別の機会にレポートをお伝えします。

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