みなさま、こんにちは。手話マップです。7月下旬になってもぱっとしない天候に新型コロナウイルス感染の再拡大で、心中穏やかでないこの頃です。皆様にはお変わりありませんか?
今回は、世田谷美術館についてお話しします。
元はゴルフ場だった広大な都立砧公園の緑深く奥まったところに位置する世田谷美術館は通称「セタビ」で親しまれ、かまぼこのような屋根が並ぶ有機的な形の建物は35年経っても色褪せていません。
開館記念展が「芸術と素朴」展であったことからもわかるように、アンリ=ルソーらの素朴派の素人画家たちの作品を収蔵していて、最近は「専門的な美術教育を受けていない画家」のカテゴリーを広げていわゆる「アウトサイダー」やそれらの影響が認められる現代美術作家の作品、アフリカ現代美術と幅の広いコレクションが見逃せません。
また昔から芸術家が多く暮らしていた世田谷区とあって世田谷区ゆかりの作家の作品も数多く収蔵されています。さらには向井潤吉、宮本三郎、清川泰次の旧アトリエ住居を整備して各作家の個性的な作品を鑑賞できる場が3つの分館として運営されていることはわが国では珍しいケースです。いかに世田谷区が芸術と密接な土地柄であることを示していて、本当に世田谷区民がうらやましくてたまりません。
そのセタビの企画展ごとに必ず催される関連講演会が質的にレベルが高く、人気も高いようです。講師は作家本人、研究者、関係者と様々ですが、これまでに隈研吾氏、藤森照信氏、馬渕国立西洋美術館館長などとトップレベルのお方たちがお話され、本当に聴講に値する内容の講演会ばかりです。その講演会によって展覧会への理解が深まったり意外なエピソードで作品の印象が大きく変わったりすることしばしばです。
そんなセタビの講演会に必ず手話通訳がつきます。事前予約や申込みは不要というありがたさ、しかもセタビのホームページでは講演会の告知ページのトップに「手話通訳付」と表示されるのですぐにわかりやすいこともまたありがたいです。
ただし、講演会当日の開始時間の1時間前よりセタビのエントランスまた講堂入口で整理券が配布されますので、手話通訳を必要とされる方でもまずは整理券を入手する必要があります。整理券がなくなると会場の様子次第で立ち聴きか外れになってしまいます。また講演会によっては決められた日までに往復はがきで申し込むことを求められることもありますので、セタビのホームページで事前にチェックしてください。
もう1つ、「講演会」の他に企画展担当の学芸員が企画展のガイダンスを行うミニ講演会「ミニレクチャー」にも手話通訳がつきます。(「ミニレクチャー」は開始30分前より整理券は配布します。)
「講演会」も「ミニレクチャー」も開始30分前より整理券の番号順に講堂に入場できますが、講堂のステージに向かって右側に手話通訳者が立ちますので、手話通訳が見える席を確保することをお勧めします。(整理券の番号は口頭でアナウンスされるので、受付の担当者に前もって一声かけることもお勧めします。)
「ミニレクチャー」で展覧会の予習をやって展覧会を一通り鑑賞、そして「講演会」でさらに理解、知識を深めて再度その展覧会を鑑賞することで、展覧会そのものを多角的に体感できる、知的エンターティンメントの醍醐味を十分味わえます。
コロナ禍の最中の現在、残念ながら「講演会」も「ミニレクチャー」も中止しています。再開を願うばかりです。
その代わり、セタビは多くの動画を作成し、発信し続けています。「世田美チャンネル」をはじめ、作家のアトリエを訪問するシリーズや作家によるオンライン教育、予告ビデオなどと多岐にわたる動画は20本もあり、セタビのホームページやYoutubeで見ることができます。
その中で「世田美チャンネル」は主にセタビの所蔵品を紹介する動画で、嬉しいことに字幕がついています。紹介する作品の前で学芸員や作家にインタービューする形で、字幕が飛ぶところもありますが鑑賞ポイントやエピソードには必ず字幕が出ますので、最後まで楽しめます。複数人の学芸員や作家の鑑賞や解説の切口が実に多様で、「へ~こんな着眼点もあるんだ」などと気づかされたり作家の生の言葉に感動したりすること度々です。事前にこの動画を拝見してからセタビに行くのがベストかと思います。
例:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/blog/entry.php?id=blg00145
砧公園の自然を感じながら、セタビこと、世田谷美術館に是非行ってみて下さい。そして気分が晴れることを祈っています。