レポート

【手話マップ・レポート vol.27】京都国立近代美術館「感覚をひらく」プログラム

京都国立近代美術館/ 京都府

レポート詳細 投稿日:2021年09月03日

残暑も収まり、しのぎやすいこの頃です。
今回は京都国立近代美術館の「感覚をひらく」プログラムについてお話します。

京都国立近代美術館では、2017年より「感覚をひらくー新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業」をスタートさせ、フォーラム、ワークショップ、ツアーなどの様々な形で事業を進めています。
それは、“目で見る”ことだけによらない新しい美術鑑賞のあり方を、障害当事者と共に模索することで、作品の新たな魅力を発見するとともに、美術館がさまざまな人びとの相互理解の場として機能する新たな可能性についても模索していくものです。

先の8月22日に終了した当館の企画展「モダンクラフトクロニクル 京都国立近代美術館コレクションより」において、「感覚をひらく」事業の1つとして「手だけが知ってる美術館 第4回 ふらっと鑑賞プログラム」が7月17日、8月21日の両日に催されました。
https://www.momak.go.jp/senses/workshop_modern.html

それは、視界を遮るバーティションの向こう側に本物のアート作品(染織作品)が配置されていて、参加者はそのパーティションの下の隙間から両手を入れて作品に触れてみるものです。作品が見えないままその感触を味わいながら、当館の研究員(学芸員)と1対1で対話します。「どんな色?」「タイトルをつけるとしたらどんなタイトル?」という内容の対話でした。
本来は視覚障害者向けの鑑賞体験プログラムですが、障害の有無にかかわらず誰でも参加できます。聴覚障害者の場合は筆談で対話することもできますし、事前に手渡されるワークシートにも注意事項や鑑賞ポイントが記されていますので、情報保障の心配はありません。
そのプログラムは、誰もが行き交い、休憩もする、当館の4階のコレクションギャラリー入口前のフリースペースで催されていて、実は筆者もたまたま見かけて参加させていただきました。予約も事前申込みも不要、プログラムの要時間も20分と、本当に手軽なプログラムでした。今回触った染織作品には、毛糸、綿に加えてポリエステル、針金などさまざまな素材が織り込まれ、硬い、軟かい、温かい、冷たいとまたもさまざまな手触りとともに、研究員との対話によってイメージがどんどんふくらんでいきました。

触覚による鑑賞は聴覚障害者でも十分楽しめるもので、「感覚をひらく」ようにして新たな鑑賞体験を通してアート作品に身近に接することの面白さ、楽しさが倍増してきます。ちょうど染織作品を数多く収蔵される京都国立近代美術館ならではのプログラム、しかも事前申込みも予約も不要でぶらりと立ち寄れる鑑賞プログラムというのがとてもありがたく好ましいものです。
京都国立近代美術館では、不定期に企画展にあわせて「感覚をひらく」プログラムを催していく予定です。ぜひ京都国立近代美術館のホームページをチェックしてください。

関連

ピックアップ