レポート

岐阜県美術館アートコミュニケータ・〜ながラーの活動に参加しました

岐阜県美術館/ 岐阜県岐阜市

レポート詳細 投稿日:2025年12月19日

2025年9月20日、手話マップの木下が岐阜県美術館で活動するアートコミュニケータ「〜ながラー」の実践ゼミの講師としてお呼びいただき、レクチャーとワークショップを行いました。

タイムスケジュールは以下の通りです。

10時–12時:レクチャー(耳が聞こえないことはどんなことか、アートコミュニケータの活動について)
13時–16時:ワークショップ

ワークショップは美術館で当時開催中だった「ふらっとぱ〜く:見る、触れる、話す、感じる、考える」という展示において、障害のある人との鑑賞プログラムを考えるというものでした。
この展覧会は4つのエリアに分けられています。作品を見ながら話したり、意見を書いたり、触ったり、見比べたリスることのできる、身体全体をフルに使って鑑賞するというたいへんユニークなコンセプトの展覧会でした。

会場で配布されていたマップ

4つのエリアは以下のような構成になっていました。

1、話す:声を出して作品について話したり、ポストイットに思ったことを書いてボードに貼ることができる
2、見比べる:実際の作品とそれをARにしたものを見比べて話す
3、さわる:彫刻作品に触ることができる。手袋なし、素手で触れた。
4、感じる:日比野克彦《Such Such Such》を体験しながら会話する。小さな箱を持って、作品を見ながら、毛糸や紙などが無造作に置かれたテーブルから作品を見たときの感じに近いなと思ったものを取っていき、最終的にスケッチする。

午後に実施したワークショップでは、さまざまなシーンを想定するために筆談あり、手話通訳あり、手話通訳なしという条件でそれぞれのエリアごとに4つのチーム分けをし、〜ながラーの皆さんに進行内容を考えてもらいながら、取り組みました。

「3、さわる」のエリアで〜ながラーと筆談をしているところ

「4、感じる」のエリアで作品の前で身振り・手話通訳を介したやり取り

ワークショップを終えたあと、チームごとにホワイトボードで振り返りをお願いし、それを元に全体で共有を行いました。

挙げられた気づきの一例として、

・手話通訳の立ち位置や周りの状況に留意しながら進行する。
・ガラスケース越しに手話でやり取りできるのは発見だった。
・筆談したものをその場にいた人たちにどのように共有するかを考えることが大事。
・筆談では端的に伝え、イラストで見せ合うのもよい一方で簡潔に書こうとするのでニュアンスを伝えづらい面もある。
・鑑賞するときと、筆談するときは作品からの距離を意識する。
・発話する前に手を挙げるなどサインを出す。
・他の来館者への配慮も必要。
・日比野克彦《Such Such Such》は箱を持ちながら進めるので、進行方法に工夫が必要。

など、多くの気づきが述べられました。わたしがそれぞれのチームに参加しながら感じたのは、〜ながラーの皆さんのホスピタリティのすばらしさでした。例えば、筆談するにしても大きめの字で書いたり、遠くにいる人には筆談の紙を見せるようにしたり、声で補足したりというところはその場にいる人たちを巻き込んでひとつの目的を達成しようという力を感じました。

引き続き、各地の美術館のアクセシビリティがさらに豊かになっていくよう後方支援していきたいと考えています。
〜ながラーの皆さん、岐阜県美術館の皆さん、どうもありがとうございました!

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