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【手話マップ・レポート vol.15】 鑑賞ツール「ポケット学芸員」

レポート詳細 投稿日:2020年11月18日

コロナ禍の第三波が懸念されているこの頃ですが、皆さまにはお変わりありませんか。

聞こえない人でも使えるアート鑑賞ツールとして「ポケット学芸員」があります。
学芸員が展示品に付けた解説文やナレーションをお手元のスマートフォンで楽しめる無料アプリで、早稲田システム開発株式会社によって開発、運営されています。

「ポケット学芸員」はお手元のスマホやタブレットに無料でダウンロードできます。
https://welcome.mapps.ne.jp/pocket/
そして操作も簡単で、まずはメニューから該当するミュージアムを選択して、展示品の脇やキャプションボードに付いている番号を入力するだけで、解説文を読むことができます。ミュージアムによっては解説文に画像や音声が付いたりします。

聞こえない人も含めて利用者側にとって「ポケット学芸員」には以下のようなメリットが考えられます。

1-展示品の間近で解説文を読めるメリット
スマホに映し出された解説文を読みながら目前の展示品を鑑賞できる手軽さ、そして文字による情報と視覚による情報がすぐに結びつくことによって理解や学習が深まる即効性があります。

2-解説文を持ち帰れるメリット
「ポケット学芸員」はインターネット経由で利用できるアプリですので、そのまま家に持ち帰っても解説文を読むことができるメリットがとても大きいです。ミュージアムでの感動を再現できますし、復習にもなれます。他のミュージアムについても解説文を読むことは可能ですので、予習や事前調査にも使えます。

3-非接触型ツールとしてのメリット
コロナ禍のあおりでレンタル機器による音声ガイドサービスや館内のタッチパネル型解説端末が使えない状況が続いています。が、その点「ポケット学芸員」は自分のスマホやタブレットで利用できるアプリですので、コロナウイルスの心配も他者が触れた機器に触れる心配も無用です。安心して鑑賞や見学に集中できると思っています。

一方、「ポケット学芸員」にデータ(画像や解説文など)を配信しているのは、収蔵品データベースとして早稲田システム開発の収蔵品管理システム「I.B.MUSEUM SaaS」を利用しているミュージアムに限られています。とはいえ、ここでも簡単な操作でデータベースに格納されているデータ(画像や解説文など)を制限も無しに配信できるそうです。それによりミュージアム側で解説文などさまざまなコンテンツの作成、配信が容易になることで、解説文にとどまらない展示品の情報の多様化、多種化が進み、聞こえない人にとってももっとわかりやすく楽しめる情報が提供されることが期待できます。
実際、高松市の讃岐国分寺跡資料館では、展示室で放映している史跡の紹介映像のナレーションを文字起こしして「ポケット学芸員」で配信しています。このケースは当の館長が、耳がきこえない来館者への配慮として企画なさったものだそうです。

現在は全国で75館のミュージアムが「ポケット学芸員」に登録されていて、そのうちでアート系ミュージアムは16館と少なめですが、最近美術館の新規登録が増加傾向にあります。「ポケット学芸員」の使いやすさから、「ポケット学芸員」を導入する美術館が増えていくことを願っています。

※画像は「ポケット学芸員」の起動画面より引用しました。

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